耀風ビジョン

日本では税理士が対応しているのに、なぜ台湾側でも見続ける必要があるのか

台湾企業が日本に子会社を設立した当初、会計構造の複雑さを強く意識することは多くありません。日本側の会計業務は税理士に委ねられ、法人税や消費税も制度に沿って申告され、必要な書類や手続きも一通り整っています。制度上は、事業運営が比較的安定した段階に入っているように見える状況です。この段階では、クロスボーダー構造が担う取引内容も限定的で、親会社と子会社の関係は、出資や基本的な支援、設立初期の管理対応にとどまることが多く、会計処理も比較的シンプルに見えます。

運営が円滑であるがゆえに、この段階で全体の会計構造を改めて見直す企業は多くありません。台湾側が継続的に関与する必要があるかどうかは、コストや効率の観点から判断されることが一般的です。目立った問題が生じていなければ、この体制は問題なく機能し、当面のリスクとして意識されることも少なくなります。

日本の税理士が担っているのは、制度の枠内での「受容可能性」である

日本の税理士の専門的な立ち位置は明確です。会計処理が日本の会計慣行に沿って行われているか、税務申告が現地の法令に適合しているかを確認し、税務当局に対して取引の背景や金額算定の考え方を説明できる状態を整えることが、その業務の中核となります。会計処理が日本の制度の中で理解され、受け入れられていれば、日本子会社の運営は継続可能となり、制度上求められる責任も果たされたものとして扱われます。

このような役割分担は、単一の法域においては非常に有効に機能します。ただし、その視点はあくまで日本国内にとどまります。親会社と子会社の取引関係が、グループ全体として一貫した流れを持っているかどうかは、日本の税理士に求められる業務範囲には含まれていません。企業のクロスボーダー活動が拡大するにつれて、会計が担う意味も、単一の制度だけでは捉えきれない領域へと広がっていきます。

取引が蓄積するにつれて、会計の役割は変化し始める

事業運営が進むにつれて、日本子会社と台湾の親会社との取引は徐々に増えていきます。管理費、技術サービス料、人員支援、費用配分といった項目が、日常的な運営の一部として組み込まれていきます。これらの取引は、単一の制度の中では合理的に説明でき、個別に申告や記録を行うことも可能です。ただし、同じ取引が二つの制度の中に同時に存在するようになると、会計処理における着眼点は次第に変わっていきます。

この段階に入ると、会計は徐々に対外的な説明を担う役割を持ち始めます。これらの取引がどのような経緯で形成され、どのように算定され、親会社と子会社それぞれにどのような影響を与えているのかを、企業自身が説明できる状態が求められます。取引量が多くなく、構造も複雑でない場合には、こうした説明の必要性は表面化しにくく、直ちに負担として認識されることはありません。

企業が会計構造による負担を実感する場面は、多くの場合、全体像の説明を求められたときです。グループ内部での管理レビューの場合もあれば、対外的な説明、資金調達、監査、戦略見直しの過程で、クロスボーダー取引の背景や合理性について説明を求められることもあります。その段階になって初めて、異なる制度の下で個別に成立してきた判断が、連続した一つの流れとして整理されておらず、単に並列して存在していただけであったことに気づくケースが少なくありません。

台湾側の役割は、構造を「遡って理解できる状態」に整えることにある

こうした状況は、違反や誤った会計処理として表面化することはほとんどなく、説明に要する負担として徐々に現れてきます。企業は過去の資料を遡って確認し、当時の意思決定の背景を補いながら、取引の考え方を整理し直すことで、初めて全体構造を理解可能な形にする必要があります。すでに構造が形成されている以上、調整の余地は限られており、整理の作業は時間を要するうえ、一度で完結することも容易ではありません。

実務の現場において、台湾の会計士やアドバイザーが関与するタイミングは、会計処理が完了した後であり、かつ、まだ顕在的な争点が生じていない段階であることが多くなります。親会社と子会社の取引は、事業の進展とともに徐々に積み重なっていきます。管理費の算定方法が実際の管理内容と整合しているか、技術サービス料の計上が具体的なサービス内容に対応しているか、人員支援や費用配分が時間軸の中で合理的に説明できるかといった点について、継続的な確認と整理が求められます。

組織規模が拡大し、取引頻度が高まるにつれて、当初成立していた処理方法も、環境の変化に応じた見直しが必要になる場合があります。台湾側の役割は、こうした過程の中で、年度や部門ごとに分散している会計処理を整理し、遡って確認できる一つの構造としてまとめ上げることにあります。その結果、各取引の背後にある判断の背景が失われることなく保たれていきます。

制度の外側では、誰かが継続的に見続ける必要がある

日本の税理士が業務をきちんと担っていることに疑いはありません。会計申告は適切に行われ、制度上の要件も満たされ、日本子会社の日常的な運営はその結果として維持されています。日本の制度の観点から見れば、これらの業務は「一つの法人がどのように管理され、監督されるべきか」という基本的な要請に十分応えていると言えます。

それでも台湾側で継続的に見ていく役割が必要とされるのは、日本側の対応が不十分だからではありません。クロスボーダー構造は、それ自体が自動的に全体像を形成するものではないからです。親会社と子会社の関係がどのように構築され、資源がどの法人間でどのように動き、意思決定の背景がどのように残されているのかといった情報は、多くの場合、年度や部門、会計処理ごとに分散しています。単一の制度だけで、こうした情報を一つの連続した流れとして整理することは容易ではありません。

事業運営が進むにつれて、この分散した状態は、理解の仕方そのものに影響を及ぼしていきます。社内では、経営陣が過去の判断を振り返り、次の対応を検討する必要が生じます。社外においても、こうした構造は、第三者が企業のリスクや安定性を理解する際の重要な判断材料となり得ます。そのような場面で問われるのは、会計処理が完了しているかどうかではなく、全体構造を継続的に把握している主体が存在するかどうかです。

このような理由から、日本側の会計業務が円滑に運営されている場合でも、台湾側の役割は代替されるものではありません。注目されているのは、個々の取引が成立しているかどうかではなく、クロスボーダー構造全体について、企業に代わって理解可能で振り返ることのできる全体像が保たれているかどうかです。それこそが、タイトルにある「それでも誰かが見ている必要がある」という言葉が指し示している本質的な意味です。