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台湾版CBAMを解読:2026年に炭素費用が開始、この産業は先に申告が必要!

1.台湾版CBAMとは?なぜ企業の注目を集めているのか?

炭素国境調整メカニズム(Carbon Border Adjustment Mechanism, CBAM)は、欧州連合が2021年に初めて提案したもので、高排出商品の輸入に炭素税を課し、カーボンリーケージを防止するとともに、国内産業の公正な競争を守ることを目的としています。台湾版CBAMはまだ正式名称が決まっていませんが、2024年に財政部や環境部など関係部会による共同説明や検討が行われ、制度の輪郭が徐々に固まりつつあります。2026年から2027年にかけて導入される重要な炭素コスト制度となる見込みです。

1.1 国際的な圧力と政策の進展

輸出主導型経済である台湾は、EU、米国、日本といった市場への依存度が非常に高い状況にあります。EUのCBAMは2023年10月から移行期間に入り(2026年に本格的に課税開始)、台湾の輸出企業は炭素排出量の算定や開示能力を強制的に構築する必要に迫られています。同時に、米国の「クリーン・コンペティション法案」や、日本が推進する炭素価格市場も、台湾の国際競争力をさらに圧迫しています。
このような背景のもと、台湾は国内での炭素価格制度を整備しなければなりません。そうすることで、将来的な「二重課税」を回避できるだけでなく、企業が早期に適応し、炭素コストを効果的に管理できるようになるのです。

1.2 台湾版CBAMの制度草案の方向性

2024年に開催された公開説明会や政策計画文書によれば、台湾版CBAMの制度設計における主な検討事項は以下の通りです。
  • 対象範囲:鉄鋼、セメント、アルミニウム、化学などの高排出産業を優先対象とし、段階的に拡大。
  • 炭素費用の基準:排出強度、業界平均、製品分類などのパラメータを組み合わせ、段階的な料金制度を導入。
  • 徴収方式:環境部が炭素費用の徴収および審査プロセスを担当し、企業は定期的に排出量算定と証拠資料を提出する必要がある。
  • 関連制度:炭素費用、排出枠、排出量取引制度(ETS)などと相互に統合。
台湾版CBAM
画像の出典:FREEPIK
 

2. 台湾版CBAMが企業にもたらす実務的課題

制度の施行を前に、企業は会計処理、データ管理、リスク管理など多方面で多くの課題に直面することになります。

2.1 会計部門の責任と課題

  • 炭素費用の会計処理:炭素費用は直接的な営業コストとして扱うべきか?資本化は可能か?どのように見積もり・引当を行うべきか?現時点では統一的な実務慣行は存在していない。
  • 開示基準の依拠:炭素排出データを財務諸表でどのように開示すべきか?ISSBやIFRS S2など、どの基準に従う必要があるのか?
  • サプライチェーンのカーボンフットプリント検証:原材料が異なる供給元から調達される場合、排出データの信頼性に差がある。会計部門は、どのデータを採用可能とするか、その基準を定め、開示方針を策定する役割を担う。

2.2 部門横断的な協働とデータガバナンスの必要性

CBAMの算定には、環境、調達、生産、財務など複数の部門が関与するため、部門横断的なデータ連携メカニズムを構築する必要があります。その目的は以下の通りです。
  • GHGプロトコル、ISO 14064など、統一された炭素算定ロジックの活用
  • 将来の炭素税をめぐる紛争を回避するため、監査記録を確保して検証可能とすること
  • ERP、炭素管理システム、財務会計システム間の統合(例:SAP、Oracle、ESGモジュール)

会計部門実務的課題

画像の出典:FREEPIK
 

3. 企業はどのように事前準備すべきか?

3.1 自社のカーボンリスク構造を優先的に把握

  • 炭素排出のホットスポットを分析(特に輸出志向製品や高炭素原料)
  • サプライチェーン各段階における炭素算定能力の有無を評価
  • 社内炭素価格を設定し、将来の炭素費用支出とその影響をシミュレーション

3.2 社内のカーボンガバナンスと報告メカニズムの導入

制度が施行されてから慌てて対応するのではなく、企業は以下の三点から取り組むべきです。
  • 炭素会計方針の策定:炭素排出データの収集、検証、開示方法を明確に規定すること
  • 外部支援の導入:ESG会計コンサルタントや監査機関の協力を得て、データフローや検証ロジックを構築すること
  • 炭素費用試算モデルの構築:炭素排出データを財務意思決定の根拠に転換し、損益予測や資本支出評価に組み込むこと

3.3 カーボン戦略と財務計画の統合

サステナビリティは単なるイメージではなく、財務構造と競争優位性を再構築するものです。企業に推奨される取り組みは以下の通りです。
  • 経営KPIに目標を組み込み、「予想炭素コスト専用口座」を設置し、将来の費用に備える資金プールとすること
  • サステナビリティ・リンク・ローン(SLL)やグリーンファイナンスを活用し、移行に伴う負担を軽減すること
  • 炭素削減成果を業績評価や配分基準に反映させること

カーボン戦略と財務計画
画像の出典:FREEPIK
 

4. 結語:台湾版CBAMは圧力であり、同時に転機でもある

多くの企業にとって、台湾版CBAMの導入は単なる規制圧力にとどまらず、持続可能なガバナンスの実効性を試す分水嶺となります。炭素コストが外部化されるにつれ、今後あらゆる製品輸出が財務・税務リスクを内包する可能性があります。もはや環境部門だけの責任ではなく、CFO(最高財務責任者)、CSO(最高サステナビリティ責任者)、CPO(最高調達責任者)といった経営幹部が協働すべき戦略課題なのです。
多くの企業は初期段階で「罰則回避」「規制遵守」に意識を集中しがちですが、その姿勢では炭素管理を競争優位に変える好機を失う恐れがあります。実際、先進的な企業は既に炭素排出を戦略的資産の一つと位置づけ、炭素排出量算定、カーボンクレジット投資、再エネ調達、技術革新といった手段を駆使して製品のカーボンフットプリントを最適化し、ブランド価値を高め、国際顧客との交渉力を強化しています。
実務面では、政府が推進する炭素算定や炭素費用制度に対応するだけでなく、社内ガバナンスの中核に立ち返り、部門横断・サプライチェーン横断での炭素情報の統合と追跡能力を構築することが不可欠です。そうして初めて「実行でき、かつ説明できる」体制が整います。将来的に炭素費用がコストとして認識され、さらには資産計上の条件となる場合、会計制度の調整やデータ検証こそが競争力の基盤となるでしょう。

炭素政策は成長を阻む枷ではなく、企業の財務ロジックを再編成し、国際的な接続を加速させる契機なのです。


 



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