カーボンレポート時代到来――ESG経営を支える会計士の新たな役割!
これまで企業の経営状態を評価する上で、財務報告は投資家、金融機関、監督当局にとって不可欠な指標とされてきました。しかし、グローバルに広がるサステナビリティ重視の動きにより、炭素排出量、環境への影響、社会的責任などの「非財務情報」も、企業価値を判断するうえで欠かせない要素となりつつあります。カーボンフットプリント報告書やサステナビリティレポートは、企業の透明性ある経営を支える新たなスタンダードとなり、こうした変化の中で、会計士はESG実践をサポートする重要な役割を果たしています。
画像の出典:FREEPIK
1. 財務報告とカーボンレポートの関係性
従来の財務諸表は、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書を中心に構成され、企業の経営状況を数値で示す役割を担ってきました。しかし、ESG(環境・社会・ガバナンス)への関心が高まる中で、企業は財務情報だけでなく、自社の環境への影響についても説明責任を果たす必要があります。これにより、「カーボンレポート」の重要性が急速に高まり、企業のサステナビリティに対する取り組みを可視化する手段として注目されています。
なぜカーボンレポートは不可欠なのか?
なぜカーボンレポートは不可欠なのか?
- 法規制への対応:EUの「企業サステナビリティ報告指令(CSRD)」や、米国証券取引委員会(SEC)による気候リスク開示の規制など、各国で企業に対する炭素排出情報の開示義務が広がっています。
- 投資家の関心:機関投資家の間では、ESGを投資判断に組み込む動きが加速しており、環境情報を開示しない企業は資金流出のリスクに直面する可能性があります。
- サプライチェーンからの要請:グリーンサプライチェーンへの対応として、大企業が取引先に対しカーボンフットプリントなどのデータ提供を求めるケースが増えており、対応が求められています。
2. 会計事務所はどのように企業のカーボンレポート作成を支援できるか
会計事務所は、財務データの検証、コンプライアンスに関するコンサルティング、および企業の内部統制において豊富な経験を有しています。そのため、企業が財務報告からカーボンレポートへと移行する過程において、以下のような価値を発揮することができます:
2.1 カーボンフットプリント調査とデータ検証
カーボンレポートの基盤となるのはカーボンフットプリント調査であり、主に温室効果ガスプロトコル(GHGプロトコル)に基づくスコープ1(直接排出)、スコープ2(間接排出)、スコープ3(サプライチェーン排出)を基準として算出されます。企業が自主的に記入したデータは標準化に欠ける可能性があるため、会計事務所は以下の支援を提供できます:
- 企業のカーボンフットプリント調査手法を精査し、国際基準に準拠した計算であることを確認する
- データの正確性を検証し、誤った報告によるリスクを低減する
- データ管理に関するアドバイスを提供し、企業が長期的かつ追跡可能な排出監視体制を構築できるよう支援する
2.2 法規制および報告基準への対応支援
国や業種によってカーボンディスクロージャーの基準は異なります。会計事務所は企業に対して以下の支援を行うことができます:
- GRI、SASB、TCFDなど、適用される法規制や報告基準の特定
- 規制変更による財務的・評判的リスクを低減するためのコンプライアンス戦略の策定
- 監査機関や投資家の要件に準拠したカーボンレポート書類の作成支援
2.3 カーボンデータを財務意思決定に活用する
カーボン排出量は企業のESG評価に影響を与えるだけでなく、財務パフォーマンスとも密接に関連しています。会計事務所は企業に対して以下の支援を行うことができます:
- カーボン排出がコスト構造に与える影響を分析し、排出削減戦略の財務的実現可能性を評価する
- カーボンプライシングや排出権取引コストを算出し、炭素税やカーボン市場への対応を支援する
- カーボンデータをリスクマネジメントに統合し、気候変動が企業経営に及ぼす潜在的影響を予測する
画像の出典:FREEPIK
3. 中小企業がESGを活用して運営コストを削減する方法
多くの中小企業は、ESGへの転換には高額なコストがかかると考えがちですが、実際には、適切な戦略を講じることで、ESGはコスト削減の手段にもなり得ます。以下のようなポイントを押さえることで、中小企業はサステナブルな成長と財務パフォーマンスの最適化を両立することができます:
3.1 法規制遵守における潜在的な課題
各国政府や国際機関は、企業のサステナビリティ転換を積極的に促進しており、さまざまな補助金、低利融資、税制優遇を提供しています。たとえば:
- 省エネ設備の導入を支援するグリーンローンやエネルギー補助金
- 排出削減に取り組む企業へのカーボンタックスに関する税制優遇
3.2 高リターンが見込めるESG投資に焦点を当てる
すべてのESG投資に多額の予算が必要というわけではなく、重要なのは、運営コストを直接削減できるプロジェクトを選定することです。たとえば:
- エネルギー効率の向上:LED照明や太陽光パネルの導入により、電力コストを削減できる
- 業務プロセスのデジタル化:クラウドシステムを活用することで、紙の使用や物流コストを削減し、業務効率を向上させる
3.3 ESGを既存の経営戦略に統合する
ESGは「追加の負担」ではなく、「既存の業務の最適化」として捉えるべきです。たとえば:
- サプライチェーン管理:ESG評価の高いサプライヤーを選定することで、将来的なコンプライアンスリスクを軽減する
- 従業員研修:従業員のESG意識を高めることで、社内から省エネ・脱炭素戦略を実行に移す
画像の出典:FREEPIK
4. 結論
財務報告からカーボンレポートへと、企業の情報開示は従来の財務指標から環境への影響へと拡大しています。会計事務所は、企業の炭素排出量の算出・検証を支援するだけでなく、コンプライアンスに関する助言を提供し、さらにはカーボンデータを財務意思決定に組み込むことで、企業のリスク管理と持続的競争力を強化することができます。このようなプロセスの中で、ESGとカーボンアカウンティングの動向を的確に捉えられる会計事務所は、企業にとって最も重要なサステナビリティ・パートナーとなるでしょう。
貴社は新たなESGの挑戦に向けて準備ができていますか?
耀風公認会計士事務所は、豊富なESG財務コンサルティングの経験を有しており、最新の法規制に対応したサステナビリティ報告フレームワークの構築を支援いたします。
2025年のESG財務情報開示についてご不明な点がございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。
2025年のESG財務情報開示についてご不明な点がございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。