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TNFDとISSBが財務報告の二大基準となるとき:「自然関連リスク」は水資源・農業・土地資産の会計評価をどのように変えるのか?

気候リスクの高度化——「自然資本」が財務開示に正式組み込まれる

国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が IFRS S1・S2 を発表し、気候関連リスクの財務開示フレームワークを確立したのに続き、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)が勧告を公表したことは、企業がこれまでの炭素排出(気候リスク)から、より広範な 自然関連リスク へ視野を拡大しなければならないことを示しています。

両基準の収斂により、TNFD は財務報告に影響を与える 第二の重要な開示基準 として位置づけられます。水資源・土地・生物多様性といった自然資本への依存度が高い産業――農業、建設業、製造業、観光業など――にとって、TNFD の導入は単なるサステナビリティ部門の課題ではありません。これは 資産評価や減損テストに直接影響する重大な会計論点 です。
 

1. 二重開示基準:TNFD と ISSB の交差点

TNFD は ISSB とは独立した体系ではなく、気候関連開示基準(IFRS S2/TCFD)と 高い補完性 を持つように設計されています。
その中心的な目的は、企業が自然への 依存度と影響 を特定・評価・管理し、これらのリスクを 財務情報へと転換する ことにあります。

1.1 リスク境界の拡大:「自然資本」の定義

TNFD は、土地・水・海洋・生物多様性などの 自然資本 を考慮することを企業に求めています。
水資源の枯渇や極端気象による土壌劣化といった自然環境の変化は、移行リスク と 物理的リスク を生じさせ、最終的には企業の 損益計算書や貸借対照表 に影響します。

1.2 会計士の視点:自然関連リスクの「財務化」

財務・会計専門家にとって TNFD の核心的な課題は、非財務情報を 財務的に定量化する ことにあります。企業は次の問いに答える必要があります:
  • 依存度(Dependence):事業が水資源にどの程度依存しており、その依存度が操業コストや生産能力にどのような影響を与えるのか。
  • 影響(Impact):企業の廃棄物排出や土地開発が生態系の劣化を引き起こし、法的リスクや評判リスクをどのように誘発するか。
これらの定量化されたデータは、資産の減損テスト、引当金の計上、負債評価 の重要な根拠となります。
画像の出典:FREEPIK
 

2. 「自然関連リスク」は資産の会計評価をどのように変えるのか?

TNFD の義務化は、土地資産や水利権など、自然資本に依存する項目の従来の会計評価慣行に直接的な挑戦をもたらします。資産評価は、市場価格や再取得原価だけでは不十分であり、基盤となる自然資本の 「健全性」 を組み込む必要があります。

2.1 土地資産と資産の減損(Impairment)

  • 従来の評価:土地の市場価格と将来キャッシュフローのみを評価する。
  • TNFD の考慮点:企業が保有する土地が生物多様性に重大な損害を与えていると認定された場合、政府による特許権の回収、生態系修復の要求、または地域コミュニティによる訴訟によって事業活動が停止されるといったリスクに直面する可能性がある。
  • 会計への影響:これらのリスクが発生すると、土地資産の将来の回収可能価額が低下し、資産の減損テストが発動され、大きな減損損失を計上する必要が生じる。大量の土地や特許権を保有する農業、建設業、鉱業などでは、影響は特に大きい。

2.2 水資源と引当金の計上(Provision)

  • 従来の会計処理:水道料金は通常、営業費用として扱われる。
  • TNFD の考え方:水資源が逼迫している地域での企業の用水行動が持続不可能と見なされると、環境規制の強化、取水費用の大幅な値上げ、さらには汚染浄化費用を負担させられる可能性がある。
  • 会計への影響:将来発生し得る環境義務や水資源回復費用などについて、会計基準に基づき引当金を計上する必要がある。これらの引当金は負債として貸借対照表に直接反映され、企業の純資産に影響を及ぼす。

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3. 会計評価における実務上の課題と対応:データガバナンスの高度化

TNFD を会計評価に取り入れることは容易ではなく、企業のガバナンス体制に大幅なアップグレードを要求する。

(1)データ取得と統合の課題

TNFD が依拠するデータ(生物多様性指数、水フットプリント、生態系の健全性など)は、ほとんどが非財務データであり、入手が困難である。企業は、環境・オペレーション・財務部門のデータを統合し、整合させるために部門横断のデータガバナンス体制を構築し、データの監査可能性を確保しなければならない。

(2)外部性コストの内部化

企業は、従来外部性として扱われてきた環境コスト(汚染の社会的コスト、生物多様性破壊に伴う潜在的罰金など)を内部化し、会計評価モデルに組み込む必要がある。これには、会計専門家と環境エンジニア、生態学者との学際的な協働が求められ、科学的に妥当なリスク割引率を構築する必要がある。

(3)実務対応:自然関連リスクを減損テストのプロセスに組み込む

企業は、TNFD が求める自然関連リスクの識別結果を、年度または中間の資産減損テストの開始プロセスに組み込むべきである。
資産の「使用価値」および「純公正価値」を評価する際には、自然関連リスクが将来キャッシュフローに与える影響を考慮し、会計評価が国際基準の厳密性に適合するようにしなければならない。


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4. 結語:「環境保護」から「資産保護」へ

TNFD が示すトレンドは、自然環境を軽視する企業が財務的な代償を払うことになる、という点を明確にしている。
台湾企業にとって、これは環境保護の考え方を資産保護・コーポレートガバナンスのレベルへと引き上げる機会である。

自然関連リスクの正確な財務化、厳密な会計評価と減損テストは、国際市場で投資家の信頼を獲得し、資金コストを最適化するための鍵となる。
 

 


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