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ESGレポートで失敗しないために?CSRDの統制と監査はこう進めると安心

EUで「企業持続可能性報告指令(CSRD)」および「欧州持続可能性報告基準(ESRS)」が施行されたことにより、世界中の企業はこれまでで最も厳格なESG情報開示要件に直面しています。EUの規定によれば、2024年から最初の対象となる大手上場企業は、ESRSに準拠したサステナビリティレポートの作成と、第三者による限定的な保証(監査)を受ける必要があります。
台湾企業の多くはCSRDの直接的な適用対象ではないものの、サプライチェーン上の役割や国際的な投資家の要求により、ESG統制と内部監査の水準を同時に引き上げる必要があり、データの信頼性・透明性・国際基準への適合が求められています。
本稿では、第一波の実務経験をもとに、企業がCSRD / ESRSの要件を満たすESG統制体制と監査対応をどのように構築すべきかを解説します。

1. CSRD / ESRS が企業にもたらす意味

CSRDは、EUにおいて現行の非財務情報開示指令(NFRD)に代わる新たな規制であり、その対象規模、範囲、開示の深さが大幅に強化されました。主な変更点は以下の通りです。

1.1 対象範囲の拡大

対象企業は従来の約11,000社から5万社以上へと拡大し、EU域外のサプライチェーンや子会社も含まれます。一定の売上高または従業員数の基準を満たす企業も対象となります。

1.2 ESRS 基準の採用

企業はESRSのフレームワークに基づいてESG情報を開示する必要があります。その内容はより網羅的かつ標準化されており、ダブル・マテリアリティ評価、ガバナンス体制、戦略、リスク管理、指標および目標などが含まれます。

1.3 合理的保証の導入

従来の限定的保証(Limited Assurance)とは異なり、CSRDでは今後数年かけて合理的保証(Reasonable Assurance)への移行が求められており、これは財務諸表と同等の検証水準です。
企業持続可能性報告指令(CSRD)
画像の出典:FREEPIK
 

2. 第一波企業が直面した実務上の課題

初期導入企業の経験から見ると、CSRD / ESRS を導入する際に直面する主な課題は以下の通りです。

2.1 ダブル・マテリアリティ評価

企業は「自社の財務への影響」と「自社が環境・社会へ与える影響」の両方を評価する必要があります。多くの企業が、報告範囲の定義、重要課題の選定、ステークホルダーへのヒアリングにおいて混乱をきたしており、統一されたプロセスや基準が欠如しています。

2.2 データ収集と統合

ESGデータは通常、各部門やシステム、サプライヤーに分散しており、統合管理できる仕組みが不足しています。従来の手作業によるExcelシートでは、リアルタイム性や監査対応の要件を満たすことができません。

2.3 内部統制プロセスの不備

多くのESGデータには「四つの目の原則」による確認プロセスがなく、監査トレースや記録保存も徹底されていないため、監査時にデータの出所、計算ロジック、意思決定の根拠を十分に説明できないという問題があります。

ESG統制および内部監査体制

画像の出典:FREEPIK
 

3. ESG統制および内部監査体制の構築方法

企業はCSRD / ESRSの要件を目標とし、持続可能かつ検証可能なESG統制・監査体制を段階的に整備する必要があります。以下は推奨される三つのステップです。

3.1 社内ガバナンス体制の構築

  • 責任の明確化
    ESG専門委員会または部門横断型チームを設置し、取締役会・経営層・現場レベルまで、それぞれの役割と責任を明確にします。
  • ガバナンス議題への統合
    持続可能性目標・進捗・課題を定期的に取締役会へ報告し、ESGをリスク管理や経営戦略の一部として組み込みます。

3.2 プロセスと制度の標準化

  • データフロー図の設計
    各ESG指標の情報源、計算ロジック、確認担当者、書類の保管、および監査経路を明確化します。
  • 管理システムの導入
    SaaSなどの専門ESGデータ管理ツールを活用し、人的ミスを減らし、業務効率を向上させます。

3.3 監査メカニズムの構築

  • 自己点検および内部監査
    四半期ごとまたは半年ごとに内部監査チームがテストと検証を行い、データの正確性と一貫性を確保します。

3.4 第三者監査への備え

すべてのデータが原本証憑、計算式、承認プロセスに遡れるようにし、外部監査要件を事前にシミュレーションします。

国際的なサプライチェーン
画像の出典:FREEPIK
 

4. 実務的な提言と今後の展望

4.1 規制を待たず、早めに取り組む

CSRDの直接的な適用対象ではなくても、サプライチェーンからの圧力や投資家の期待により、多くの企業がすでに早期対応を始めています。まずは既存の報告プロセスを見直し、段階的にCSRD準拠の水準へと移行することが推奨されます。

4.2 外部リソースの活用

フレームワーク構築やプロセス設計、チームのトレーニングにおいては、コンサルタントの支援を受けることが有効です。また、ソフトウェアソリューションを導入することで、データの質と業務効率を向上させることができます。

4.3 継続的な最適化

ESG開示基準は現在も進化を続けており、企業は重大性評価の見直し、目標の更新、監査の重点領域の調整を定期的に行うことで、規制と市場の要請に継続的に対応することが求められます。

5. 結論:データと制度で市場を納得させる

CSRD / ESRSという新たな枠組みのもと、ESGはもはや単なる広報スローガンではなく、企業統治、内部統制、リスク管理の中核となっています。健全なESG統制および内部監査体制を構築することで、開示品質を高め、監査リスクを低減し、投資家・顧客・監督当局からの信頼を獲得し、国際的なサプライチェーンにおける優先的なパートナーとなることが可能です。
今すぐ現状を棚卸しし、制度を設計し、チームを育成することで、あなたのESGレポートは市場と時間の検証に耐えうるものとなるでしょう。


 



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